J850 書く 授業記録

「J850 書く」の授業記録用ブログです。

第三回 課題の提示の仕方、第4課

基本情報

参加学生:10名

 

授業内容

1.要約文の作成(15分)

・受講生が要約文の作成に慣れてきたこともあり、出席者全員が15分で要約文を作成することができた。

 

2.前回の要約文(『さよなら国立競技場』)のフィードバック(20分)

受講生の書いた要約文から例を4つあげ、プリントとして配布した。

要約のポイント

①書くべきポイント

・重要なのは、国立競技場が建て替えられることではなく、「さよなら国立競技場」というイベントが開催され、それを人々が楽しんだということ。

・なぜ、建て替えられるのか、なぜ、イベントが開催されたのか、「WHY」の部分を書くことが大事。

②書かなくてもいいポイントについて
・4段落から構成されているが、最後の段落の内容は一番最初の段落の要約で補うことが可能なので、削っても良い。

取り上げられた例文

例文1:記事の構成を入れ替えず、そのままコンパクトにまとめたもの。

例文2:記事の構成は殆ど変っていないが、第4段落目の内容を最初の段落の部分に挿入しているもの。

例文3:例文1、例文2とは、第一段落のまとめ方が異なっているもの。

例文4:記事の構成が入れ替わっているが、うまく要約文として成立しているもの。

注意事項

・点の打ち方:特に一文が長くなってしまった場合、適切な場所に点を打たないと非常に読みにくくなる。

・イベントはすでに終わっている:記事が「~た」体で書かれていることから、イベントはすでに終わっていると推察することができる。
 →「イベントが行われている」などの書き方は間違い。

 

3.作文(前回の宿題)のフィードバック(10分)

受講生の宿題から例を三つ取り上げ、プリントとして配布。

宿題内容の確認

テキストに提示された構成に従って、レポートの序文を書く。
問題の指摘 → 問題解決の必要条件の提示 → 研究行動の提示

注意事項

・テキストで提示された定型文のうち、「研究行動の提示」を書くのを忘れていた受講生が多かったので注意。

取り上げられた例

例1、例2:指示された構成に従って、シンプルにまとめられたもの。例1と例2では、語の定義を挿入する場所が異なっている。
 →例1:近年、Aが問題になっている。Aとは、~である。
 →例2:近年、~という現象、すなわち、Aが問題になっている。

例3:問題提起が詳しく書かれたもの。自分で考えて、詳しく問題提起をした点が素晴らしい。しかし、研究行動の提示を忘れている。

注意事項

・「そこで」を使おう!
 「そこで、本稿では~」というのがレポートのパターン。「したがって」「そのため」でも間違いではないが、「そこで」を使うのが望ましい。

・「本稿」を使ってみよう!
 小さなレポートの場合、序文では、「本研究」よりは「本稿」や「本レポート」といった表現が使われる。

・自分の分野に合わせた表現を使おう
 事前に実験を行い、その結果を報告する、理系の論文、レポートでは「検討した」が、論文を読みながら理論を組み立てていく文系の論文、レポートでは「検討する」が使われる。
 なお、要旨を書くときには、「検討した」が使われることの方が多い。

・「所謂」よりも「である」を使おう!
 レポートでは、「~という現象、所謂、A」より、「~という現象であるA」という表現を用いること。「所謂」だと、「通称」「一般的には~といわれている」というようなニュアンスが出る。

 

4.グループに分かれ、作文の確認(15分)

3グループに分かれ、お互いの作文を見せ合いながら宿題をチェック。

 

5.第4課の説明(15分)

注意事項

・第3課の「課題の提示」とは異なる構造をとっていることに注目。

・「によって」と「によれば/によると」の違いに注意。
 「~によって、~がわかった」
 「~によれば/によると、~だ」(によれば/によると→情報源の提示の機能を持つ)

・「解明」と「究明」の違いに注意。
 中国語の「究明」と日本語の「究明」では意味合いが異なるため、「解明」の言い換えとして「究明」を用いるのは好ましくない。

 

授業メモ

 

全体的な感想

第一回、第二回は受講生に授業に慣れてもらうための、イントロダクションとしての側面があったため、第三回目の授業でようやく、通常通りの授業が始まったという感があった。
第一回、第二回では授業の運営面にばかり目が行っていたが、今後は、授業の内容も注視しながら、実習生として授業に参加して行きたい。

フィードバック用のプリントの作り方

この授業は、予習型の授業であるため、教科書を読むことよりも、作文のフィードバックを主体に授業が進んで行く。今回の授業は「通常の」授業としては最初の授業だったが、今回の授業を見学して、どの作文を例として取り上げるか、取り上げた作文を通して何をポイントとして受講生に伝えるかがとても重要であると実感した。
この授業では、目に見えるフィードバックとして、フィードバック用のプリントを配布している。これは、受講生の書いた要約文、作文から、よく書けているものをピックアップし、プリントしたものである。しかし、「よくできている作文」にも、指示通り、シンプルにまとめた作文もあれば、学生なりの工夫が凝らされたものもあり、ランダムに並べるだけでは意味がない。今回の配布されたプリントを見て、取り上げる作文の選び方、並べ方に、下記のような基準が設けられているように感じた。

①教科書や授業中に指示されたことを、そのままシンプルにまとめているもの。
 → 例として最初に取り上げることで、学生に、模範的な作文のモデルを提示する。

①' ①とは異なる方法で、シンプルにまとめられているもの。
 → ①と同じように、指示通りにシンプルにまとめられているが、①とは文章の順番や構造が異なっているものを、「こういう書き方でもよい」と、①とは異なる模範モデルとして学生に提示する。この時、①とはどこが異なっているのか、説明する。

②教科書の内容を応用して書いているもの。
 → 指示されたことをそのまま作文したのではなく、自分で調べたり、自分で工夫したりして、文章を詳しく、読みやすくしたものを①の次に置く。大学では、自分で考えたり、調べたりすることが重要なので、①がシンプルなモデルであるのに対して、こうした作文は、「理想的な回答」であるといえる。こうした回答を取り上げることは、「より良い作文を書こう」と、学生が一歩踏み込んで学習するためのモチベーションを引き出すと考えられる。

③教科書の指示とは異なっているが、成功しているもの。

 → 教科書や授業の指示には反した構造や文体を用いているが、レポートの文章として十分に通用するような文章を②の次に取り上げる。このような例は、「教科書にはこう書いてあるが、こういう場合はOK」という例外を提示するのに役に立つ。但し、このような例を取り上げる場合は、どのような条件であれば大丈夫なのか、その理由と条件をはっきりと提示する必要がある。

 

今後の課題

まだ、授業の運営の仕方や、授業内容にばかり目が行って、学生の様子にまでは注意が向いていないので、少しずつ、学生の様子や反応も確認するようにして行きたい。