J850 書く 授業記録

「J850 書く」の授業記録用ブログです。

最終回:レポートの提出

授業の流れ

1.要約FB

  • 要約文は、本文を縮小するようにして書くこと。主要なトピックを漏らさないように。

2.授業評価記入、ポートフォリオ提出

  • 授業についての評価を記入。
    この授業を通して、文体、構成など、どの程度の力がついたと実感しているか。

3.レポートの自己評価、要約

  • 自分の書いた期末レポートを自分で評価。
    また、各自、期末レポートを200字程度に要約する。
  • 注意:「図」と「表」の違いに注意。基本的に、図は下に、表は上にタイトルを書く。

感想

学生の自己評価を概観すると、以下の3点について、作文の技術が身についたと実感しているようだった。

  1. 「である」体の習得
    これまでは、基本的には「ます」調で作文していたが、この授業を通して、「である」体で文章を書けるようになった。
  2. 構成力
    思いついたことをそのまま書く作文から、頭で構成を考えてから書く作文ができるようになった。
  3. レポート的な表現のテクニック
    図表の提示の仕方など、レポートを書くときに必要となる文章表現のテクニックが身についた。

特に、2の文章の構成力は、レポートや論文を書くための基本的な能力である。この授業を通して、構成を意識して文章を書けるようになったことを学生自身が実感しているのは、とても望ましい結果であると思う。

授業全体の感想については、後日、最終レポートにて提出したい。

第10回 レポートの下書き

授業の流れ

1.要約(15分+10分)

2.要約フィードバック(15分)

  • 全体的に、新聞記事を要約する技術は身についてきている。
  • どの情報を要約文に載せるか?
    → 要約が指定より長くなりそうな場合、記事の主題が何かを見極めて、主題に関係ない情報は切るようにする。

3.作文FB(20分)

  • 問題提起の仕方。
    問題の背景をした後に、問題提起を行うが、何がどのように問題なのか、具体的に分かるように問題提起する必要がある。
    Ex.それでは健康とはなんだろうか? → 抽象的すぎる。
      それでは、健康とはどのような概念なのだろうか?
    → それぞれの問題提起の部分を確認しながらグループワークを行った。

4.期末レポートの下書きチェック(20分)

  • テーマごとにグループを作り、それぞれの下書きについてコメントし合うグループワークを行った。

感想

  • 博士課程の学生や母国でレポートの書き方やレポート的な思考方法を身につけてきた学生は、主題を立てる→本論を書く→結論を書く というレポートの組み立てがうまい。日本語の表現としてはおかしいところがあっても、レポートの構成がしっかりとしているので、レポートとして何が書きたいのかが分かりやすく、添削もしやすい。
    対して、レポートの構成が苦手な学生は、作文能力が高くても、「自分で論を組み立てる」というところで躓いているため、結局何を言いたいのかよくわからなくなってしまう。そのような学生は、自分がどこに関心を持っているのか、取り上げる主題のどこに問題があるのかなど、主題を立てることを苦手としているように見えた。そのため、文献を読む、情報をまとめるといった基本的な能力は高いので、ブレインストーミングをしたり、マップを作るなどして、どうやって問いを立てて、どんな結論に向けて論を進めていくのか考える練習が必要だと感じた。
  • レポートの構成がうまく、下書きをうまくかけているように見える学生も、自分で「どこまでが序論で、どこまでが本論で、どこまでが結論なのか」よく分かっていないケースが見られた。特に、本論の考察部分と、結論部分の違いが曖昧になっているようなので、「結論では今後の課題を示す」など、具体的な結論の書き方をイメージできるようにする必要があると感じた(一番最初の授業でレポートの見本を配っているので、その存在を思い出して、参照してもらうのがいいかもしれない)。

第9回 同意と反論、結論の書き方

授業の流れ

1.要約FB

自動詞があっても受身を使う文型の練習。
  • 例:老朽化が進む。
      老朽化が進められた × → (誰かが)進める
      老朽化が進んでいる ○ → 自然と進む
    → 受身を使う場合、「誰かが意図的に」進めるというニュアンスが含まれることに注意。

  • 例:仏教は中国を経て日本に伝わった。○ 
      (自然と伝播してきた)
      仏教は中国を経て日本に伝えられた。○
      (誰かが日本にわざわざ伝えに来た)

  • 例:生徒の反対があったが、先生の意見で校則が変わった。○
      (中立的な視点)
      生徒の反対があったが、先生の意見で校則が変えられた。○
      (生徒の視点)

2.要約(15分)

3.作文FB

  • 引用をするときには、引用をただ並べるのではなく、その引用をした根拠が分かるように書く。(自分はその意見に賛成か、反対か。その意見を引用することで何を言いたいのか)

4.第13課、第14課(結論)

 断定度の違いに注意
  • 歩くのは健康によい。→ 断定している(断定度が最も高い)
  • 歩くのは健康によいと言える。 → 断定度は高い。
  • 歩くのは健康によいと言えよう。 → 「言える」より低い。
  • 歩くのは健康によいと考えられる。 → 「言える」より低い。
  • 歩くのは健康によいと思われる。 → 「考えられる」よりも低い。(分野によっては避けられる表現)
 筆者の見解ではなく、一般的に言われていることを表す表現
  • 歩くのは健康によいと言われる。
  • 歩くのは健康によいと言われている。
  • 歩くのは健康によいと考えられている。

感想

  • 基準となる学生を見つける。
    学生の特徴、レベル、キャラクターも分かってきているので、「この学生が間違えているということは、ほかの学生も分かっていないのではないか」というような推測ができるような、授業や文法の理解度の基準となる学生を見つけると授業内容を決めやすくなる。

  • 学生の特徴に合わせた指導
    授業も後半に入り、学生たちの作文能力が上がってきたことで、学生の日本語の癖(連体修飾の多用、「~上に」の多用など)が見えてくるようになってきたため、学生に合わせて、個別に文法書を紹介するなどの対応が必要になってきた。個別に指導するべきか、授業で取り上げるべきかの判断が難しいが、その判断のためにはそのような間違いをしてしまう原因を把握するとともに、学生のレベルや癖を把握しておくことが重要であると感じた。
  • レポート作成に向けての考察力
    学生によっては、日本語の表現には多少問題が見られても、考察力があるのでレポート作成力はあったり、要約や宿題はうまくこなせてもレポートを作成するためのリサーチ力や考察力が足りない学生がいたりする。この授業は日本語の表現を扱うので、考察力についてまでは指導の手が回らないが、授業の後半になってくると、レポート作成に向けて考察力が問われてくるので、グループディスカッションやFBの際に、考察力のある学生の回答をうまく活用できるようにする必要があると感じた。

第8回 引用、同意と反論、レポートの書き方

授業の概要

出席学生:7名

授業の流れ

1.要約(15分+5分)

2.要約FB(10分)

文型に注意
  • Aによって/により → Bが分かる/分かった/明らかになった
     → 「よって」は原因、手段をあらわす
  • Aによると/によれば → Bである。/という。/ということである。
     → 「よると」は情報源を示す。

 

3.作文FB(10分)

  • ただ引用するのではなく、なぜ引用するのか、引用の意味づけ(説明)をすること→ レポートのオリジナリティ

 

4.12課の説明(同意と反論)(10分)

よく使う表現
  1. Aの見解には問題がある。(反論を示す)
  2. Aが述べているように~。(同意を示す)
引用の書き方に注意!
  • 引用は、実証できるように書くこと。必ず、読者が文献を辿れるように書く。
  • 引用の書き方は分野によって違うため、教科書を参照しながら、分野に合わせた書き方を身につける(いろんなスタイルを混ぜないように)。

 

4.期末レポート説明(20分)

  • レポートには、表紙の書き方から書く手順まで、決まった枠があるので、それに沿って書くこと。
  • レポートは論証型を求められることが多い。
    (単に文献をまとめたり、調べたことを報告するようなものではない)
  • レポートを書く際には、(自分の)論点を定めることが大事。
    →どんなレポートを書くことが求められているのか?考えながら書く。
    ※論点が広すぎるのはNG。できるだけ狭めて書く。
     Ex.日本語教育における作文教育→ 上級者の作文教育

 

授業の感想

  • 期末レポートに向けてレポートの書き方を学ぶ回だったが、年末のため、参加学生が少ないのが残念だった。しかし、参加学生が少ない場合、学生の反応を見やすくなり、一人ひとりの回答を確認したりするなど、普段はできない対応ができるというメリットもあると感じた。
  • これからの作文の宿題は、課題の提示から考察まで、レポートを意識しながら書くことが望ましい。これまでの宿題で、考察部分を書いていなかった学生が考察を書こうとするときに、どのような問題が出てくるのか、注意したい。

列挙、第11課

授業の流れ

要約15分

要約FB

・新聞独特の書き方とレポートの書き方の違いに気をつけること。
 ×面積が拡大、 ○面積が拡大し、

作文FB(教育実習)

・先行研究に言及すること。
 Ex.Aによると、Bには3つの理由がある。
 Ex.AはBの理由を三つ挙げている。

・教科書に挙げられている理由だけでなく、自分で説明を加えること。

 

取り上げた例文

例1.シンプルにまとめられているもの。
 宿題の課題に忠実に、与えられた文型を使っているもの。

例2-4.例1の応用編。自分で、列挙された理由についての説明を加えていて、より、レポートらしいものになっている。

グループワーク

自分だったら、どのように理由を説明するか、グループで考える。

 

第11課

注意点

・「さて」は使用しない。

・論点を提示するときには、疑問表現だけ(Aだろうか)用いるより、疑問表現+「について」(Aかについて)を使ったほうが良い。

・「なぜ」を使ったら、疑問系を用いる。
 ○問題は、なぜ、Aが増えているかである。
 ×問題は、なぜ、Aが増えていることである。

 

感想

・教育実習の二回目だったが、グループワークの時間配分がうまくいかなかった。あらかじめ、目安時間を示す、話し合いが終わったグループから発表させるなどして、時間を区切れるようにしたい。

・グループワークで出てきた意見と掴んでほしいポイントを、もっと臨機応変に結び付けられるよう、あらかじめ、色々なパターンを想定してから授業に挑むようにしたい。

・今回、担当した宿題はJ850レベルの学生には簡単なものだったので、添削をする部分が少なく、比較的やりやすかった。しかし、添削する部分が多くある場合もあるので、ポイントを絞って添削するよう心がけたい。

・前回の教育実習で、間が短いという指摘があったので、一番、教科書を開くのが遅い学生を見つけて、その学生に合わせて間を取るように心がけた。しかし、声が上ずる、顔を上げない、早口になるなどの癖については、意識がおろそかになりがちだったので、気をつけたい。

第6回 原因の考察、第10課

授業の流れ

要約(15+10分)

要約フィードバック(10分)

1行しかない第一段落目をどう扱うか

「問題になっている」と問題提起していることに注意

 →「問題がある」ということを要約文でも明記する。

   ×というニュースがあった。/と報道された。

「という人もいるが」(引用文)に注意

筆者は「という人もいるが」と他の人の意見を引用し、それを批判している。

 →賛成するため(筆者の意見を強化する)の引用か、批判するための引用か見極めること。

  • 要約文の例:一段落目をそのまままとめたもの、「~という事件が起こって、問題となった」というように、一段落目と二段落目をまとめたもの。

 

作文フィードバック(20分)

原因の考察の書き方の基本を忘れないこと
  • 最初に「図表の提示」(図2は~を示したものである、など)をする。
  • データの説明をするときには、数値を具体的に挙げること。
  • 判明事項の指摘、考察をすること。
文型についての注意
  • 原因として/要因として
    → ことがある。/挙げられる。/考えられる。
    → × ~である。/からである。
  • 原因は/要因は/理由は/
    → ことである。/と考えられる。/からである/ためである。

 

第10課の説明(15分+5分)(教育実習)

主な文型

  1. まず、 次に、 さらに/また
  2. 第一に、 第二に、 第三に、
  3. 第一は、 第二は、 第三は、
  4. 一つは、 もう一つは (※ポイントが二つのときに用いる)
順番がある場合とない場合に注意
  • 調査の手順のように、挙げる項目に順番がある場合
    → まず、次に、さらに/また の文型を使う
  • 順番がない場合
    → 第一に(は)、第二に(は)、第三に(は) の文型を使う方がいい。(まず・・・・・・の文型も使うことができる)。
「は」で始まる文型に注意
  •  第一は・・・・・・ことである(名詞形)で終わること。
文型を混ぜて使わないこと

 ×まず……、第二に……、第三は……ことである。

教育実習の流れと指摘

最初に教案を作ってから、二回、改訂して、今回の形になった。

改訂する際の注意事項

  • 授業の流れを意識する
    中心となるポイントを幾つか決め、ポイント同士が交差しないような流れで授業を進める。
    今回の場合:順番のあるなし→「ことである」→その他の注意事項

  • 口頭で説明するだけでなく、学生が目で確認できるように、配慮する。
    → ホワイトボード、プリント等を活用。

  • 授業に緩急をつける
    ホワイトボードに書き込む、学生に手を上げさせるなどして、授業が一本調子にならないようにする。

  • できるだけ具体的に説明する。
    文型を説明するときには、できるだけ具体例を挙げながら説明する。
    ×「内容と数を説明するのが存在の指摘です」
    ○「「三つの重要なポイントがある」「留学先を決めるのには、重要なポイントが三つある」のように、内容と数を説明するのが存在の指摘です」

 

教育実習をした後の注意事項

先生より
  • しっかりと間合いを取る
    教科書をめくる時間、プリントを見る時間など、できるだけ長めに時間をとること
  • 下を見ない
    教科書、プリントなどの資料はできるだけ手に持って、目線を上げ、学生の様子が見えるようにする。
  • 手を上げない人への対応
    学生に手を上げさせる場合、あげない人がいたら、何らかの反応を返すこと(「手を上げていない人は、どちらも使えない、ということでしょうか?」)
  • 声が高くならないように注意
学生からの指摘
  • 緊張しているように見えた。
  • 喋るスピードが少し速い。
  • 敬語を緩めたほうがいい。
  • 板書に番号を振ってほしい。

 

感想

  • 最初の教案から、先生に指摘を受けて、大幅に改訂することになった。授業の流れを作るには、どの文型にポイントを置くのか、その文型の何がポイントなのかをしっかり把握していないといけない。教科書の文型の並べ方の意図や、教科書に足りない部分などを見極めてから、教案を作る必要があると痛感した。

  • 元々、喋るのが早く、一本調子になりがちなので、授業の際には、意図的にゆっくり、はっきり喋ることを心がけた。しかし、緊張すると、声が上ずる、間合いが短くなる、ゆっくりめに喋っているつもりでも早い、などの問題が出てくるので、気をつけたい。

  • 最初はホワイトボードを使用しない予定だったが、先生の指摘を受けてホワイトボードを使用することにした。
    ホワイトボードを使うことで、文型の視認性が高まる+強制的に自分の喋るテンポを区切ることができる+目線が上がるので、積極的に利用していこうと思う。

  • 今回は、先生の指導を受けながら、じっくり教案を作成することができたが、来週は教案を作成する時間が2日しかないので、臨機応変に対応できるよう、ポイントをしっかりと抑えて、教案を作成したい。

第5回 対比と比較、第9課

基本情報

 参加学生:11名

授業内容 

1.要約文の作成(5分+15分)

2.要約フィードバック(25分)

  • 右肩下がる? 
    「右肩下がり」は一つの名詞で、「下がる」という動詞化はできないので注意。
  • 名詞にかかる言葉に注意すること
    連体修飾を長くして、要約文を作成する学生が多いが、長すぎると、読みにくくなる。長くなりそうな場合、文章を区切るよう心がける。
    Ex.30~50代男性を中心に42.4%でピークであった喫煙者率は……
     → 喫煙者率は30-50代男性を中心に42.4%でピークだったが、

  • 見込み? 予想される??
    「予想される」→外れる場合がある。
     Ex.競馬の予想、車の売り上げ
    「見込み」→ほとんど、その通りにになる。
     Ex.車の生産量

  • 複数ある原因をどう要約するか? 
    1.最初に挙げられている要因は省かない方がいい。
    (重要である可能性が高い)
    2.具体例を一つは挙げて略す
     ×さまざまな要因が考えられるが
     ○高齢化など/をはじめ、さまざまな要因が考えられるが
    3.名詞化して、一文を短くする
     Ex.~が強化された → ~の強化
      ~によって~があがっていること → ~による~の上昇

3.作文フィードバック(25分) 

 ※図の説明、考察の基本パターン1
  図の提示→データの説明→判明事項の指摘(結果の考察)

 ※基本パターン2
  図の提示→判明事項の指摘(結果の考察)→データの説明

  • まず、パターン1を用いた例文と、パターン2を用いた例文が取り上げられた。
  • 次に、二つの図を説明した例文が取り上げられた。
注意事項 
  • 「一方」「それに対して」など、比較表現を分かりやすく利用すること。
  • 図1、図2と二つの図を利用する場合、段落を分けるなどして、どこからどこまでが図1について説明していて、どこからどこまでが図2について説明しているのか明確にすること。

第9課の説明(5分) 

  • 「原因の考察」については、これまでの宿題でもかけているので、内容を大まかに確認するのみ。文型・表現のページを参照しながら、原因の書き方を復習した。

  • 宿題について:基本的には、パターン1を用いて書くこと。応用をしてみようという人は、パターン2を用いるなどしてもよい。

 

授業の感想 

  • 巻末の「文型・表現」のページを参照しながら復習をすることで、これまでの四回の授業が、頭の中で整理しやすくなったのではないかと思う。
    おそらく、授業で参照していないページや、宿題に直接関係のないページは見ていない学生も多いと思うので、学生に参照を促すという点でも効果的だと感じた。

  • この授業はノートを持ってきている学生があまりいないので(教科書やプリントに直接書き込む)、黒板に書いてあることをどの程度、メモをして、家に持ち帰れているのか気になった。
  • 学生のキャラクターが分かってきたので、グループ分けの際に、おとなしい生徒と積極的に発言する学生を一緒のグループにするなど、工夫してみたい。