J850 書く 授業記録

「J850 書く」の授業記録用ブログです。

第四回 変化の形容、第8課

基本情報

参加学生:10名

 

授業内容

1.要約文の作成(15+5分)

2.要約フィードバック(20分)

  • 何を省略するか、考えながら要約する。
    Ex.「厚生労働省が発表したXによると……」
    → 厚生省の発表によると……、Xによると……、厚生省によると……
    省略できるものは何か見極めよう。

  • 推計する?推測する?推察する?
    「推計する」→×
    「推測する」→測れるもの(明確な数字に基づいたもの)に用いる
    「推察する」→測れないもの(先行文献など)に用いる

3.作文フィードバック(30分)

  • データの説明は具体的に!
    「AはX%増えている」というように、数字を挙げて説明することで、説得力が増す。

  • 結果と考察の区別を!
    「AからBがわかる/明らかである」
    結果の説明にも、考察にも用いることのできる表現。
    「AからBがわかった」→結果
    「AからBが明らかになった/といえる/考えられる」→考察
    というように、使い分けてみると良い。

  • 実例から
    同じデータを扱っていても、地域ごとの特徴に着目するか、時代の変化に着目するかによって、明らかになることが異なる。

  • とともに?にともなって?にしたがって?につれて?
    グループジャマシイ編(1998)『日本語文型辞典』、くろしお出版から説明
    (※今後、上級クラスの学生は、このような文型辞典をひく機会が増える。)
    • 共に:汎用性が高い
    • 伴って:「共に」と殆ど同じだが、よりformal
    • に連れて:連動した変化のこと。バラバラであるはずのものが一緒に動くイメージ
    • に従って:あるひとつのできごとに従属した変化のこと

  • 今日は時間の関係で、グループワークはなし。


4.第8課の説明

  • 説明が先?結論が先?
    これまでは、図表データの説明→結論というパターンを勉強してきたが、結論→説明というパターンもありうる(特に、理系や英語を意識した文章では多く用いられるパターン)。
  • 判明事項の指摘の仕方
    • 図AからXがわかる/明らかである。
    • 図Aから分かるようにXである。
      →Xが短い場合は前者、長い場合は後者を用いる。

  • "(名詞)のに対し・・・"
    「こと」ではなく「の」を用いること。
    決まった文型として覚える。

  • 「は」と「が」の使い分け
    Aは上昇し、Bは下降した。
    Aが上昇したのに対し、Bは下降した。
    →「~が~のに対し」のように文章が一度切れる場合、「が」を用いる。

  • 「Aのうち/うちで/の中で/、最も~」
    「うち」と「なか」の使い方に注意。
    • 「うち」:「うち」もしくは「うちで」
    • 「なか」:「中で」(「~中」のように、「中」でとめない!)

授業の感想

  • フィードバックで取り上げる例文について
    フィードバックの例文で取り上げられた学生がとても喜んでいたので、授業のモチベーションに繋がりそうだった。
    → できるだけ満遍なく学生の答案を取り上げること

  • 今回はトピックスが多かったため、グループワークの時間を削って第8課の説明をした。前回同様、授業時間が足りなくなる場合に備えて、何を優先するかを決めておくのが重要であると感じた。
  • 「に連れて」「ともに」「したがって」の説明がまだ、自分ではうまくできなさそうなので、次回までに調べておこうと思います。

第四回 図表の提示、第7課

基本情報

参加学生(13名)

授業内容

1.要約文の作成(15分)

2.要約フィードバック(20分)

  • 原文の論理構造に気をつける

要約文だけ見るとよく書けていても、原文とは内容が異なる場合がある。
Ex.原文が逆接で文章を結んでいるときは、なぜ、その逆説を用いているのか、意図を読み取ること。

 

3.作文フィードバック(フィードバック20分、グループごと15分)

  • 客観表現を用いること
    主観的表現は用いない:驚くほど、なんと、断トツの、予想通り、ご存知の通り、やはり(※使う場合は、前に何らかの説明をおく必要がある)
  • 文型に注意
    言い切りの形を使う ○~する
    →「考えよう」のような人に呼びかける表現は用いない。誰かに話しかけるのではなく、「一人で説明している」という意識を持って書くこと(同じ理由で敬語も使わないこと)
  • 数値の評価
    達する vs 上る
    →「達する」の場合、前提として何らかの達成目標が設置されている。
  • 考察(判明事項の指摘)まで書くこと
    →書く際には、「結果が出た」ではなく、「ことが分かった」など、それが判明事項だということを分かりやすく書く。

4.7課の説明(5分)

時間がなかったため、クイズを解きながら説明。

 

授業メモ

  • 時間配分がうまくいかなかった場合の対応
    今回はグループごとの話し合いが長引き、第7課の説明時間があまりなかった。そのため、クイズを解きながら、実例に沿って説明するという形が取られた。
    → 時間が押した場合に臨機応変に対応するため、ここだけは説明しておきたい、など、情報の優先順位をあらかじめ用意しておくことが必要。

 

授業の感想

今回は、学生と同じ立場で授業に参加し、グループ分けにも参加した。

グループに参加して感じたことは以下の三点である。

  • 学生が意見などを述べやすい
    →グループに参加していない時よりも、私はここがおかしいと思う、何でこの解答でだめなのか納得できない、ここがよく分からない、など、色々な意見を聞くことができた。

  • 発言力のある学生が一人はいた方がいい
    →「なんでこれで間違ってるのか分からない」と、疑問に思ったことを、物怖じせずに発言できる学生が一人いると、その学生に答えるために、おとなしい学生も発言をする。また、それに触発されて「私はここが気になる」などの発言も出て来やすくなる。今回、私が参加したグループでは、アジア圏の学生は比較的大人しく、非アジア圏の学生は積極的に発言していた。学生の国、文化、キャラクター、性別など、グループを分ける際には、多様な構成にする必要があると感じた。

  • 学生同士で話すことで、疑問点が解決する
    →それぞれの作文を回し読みするという形を取っているので、作文を読むだけで、殆ど誰も発言しないままグループの時間が終わることもありうる。しかし、人に質問することで、自分の疑問点がよりクリアになったり、人に説明することで、お互いの理解が深まったりするので、できるだけ発言を多くしていったほうがよいと感じた。

グループの中で学生と接しているほうが、学生のキャラクターも分かりやすく、距離も縮まると感じたので、来週も同様に参加しみたい。

第四回 定義、分類の仕方、第6課

基本情報

参加学生:14名(欠席:2名)

 

授業内容

1.要約文の作成(15分)

全ての学生が、13分程度で作文を完成させていた。

2.要約FB(20分)

取り上げられた例文は計5つ。

例1、例2:パラフレーズがうまく行っているもの。

例3~例5:内容の理解は十分で、要約もうまくできているが、「情報をまとめる」まであともう一歩なもの。

ポイント:記事の全体の構造を捉え、情報をまとめることが大事。

・重要な情報は第一文にあるとは限らない
→今回の記事は、一文目に情報源、二文目に文章のテーマという構造を取っていた。「それによると」というような接続詞に着目して、どの情報を取り出すか見極めることが必要。

・具体的な数値より、全体を捉える言葉
→数値が多く出てきた場合、具体的な数字(若者では○%から●ポイント増加した)より、全体を捉えている言葉(「若者の間に急速に普及している」)を取り出す。

・全体の構造を捉える
→今回の記事は、一段落目と二段落目では言及している対象が異なるため、話題が何かに着目して、それぞれの段落をまとめる必要性がある。

注意

・「年」と「年度」の違いに注意!

 

3.作文FB(20分)

三つの例文を例に、FBが行われた。

ポイント

1.「引用」を忘れないこと
→「~によると」「~によれば」という、引用の明示を忘れないこと。今回の課題では、ノートの引用部分がわかりにくかったが、少なくとも、タイプA行動パターンとタイプB行動パターンの引用元は分かるようになっている。

2.説明不足に注意

→今回の課題は、構成パターンは全体的にうまく書けていた。しかし、構成パターンにそのまま当てはめるだけでは、論理的な流れとしては不十分になってしまうことがある。
Ex.「行動パターンには、XとYがある。本研究では、Xを取り上げ、検討を行う」
→なぜ、その研究を行うのか、論理的な流れが途切れている。
「本研究では、Xの○○面を対象とし、分析する」
「以下、近年減少しつつあるYについて考察をする」
のように、何を取り上げるのか、なぜ、取り上げるのかなどの情報を補足することで、論理的な流れができる。

注意

分かれる?分けられる?
「XはA、B、Cの三つに分かれる/分けられる」
→「分かれる」でも文法的には間違いではない。しかし、誰かが明らかな意図を持って分類していると考えられる場合、自動詞では不自然であるため、「分けられる」を使うべきである。

 

4.第6課の説明(15分)

図表の提示の仕方

ポイント

・基本のパターンをまず覚える
→応用パターンとして、教科書とは異なるパターンで書くことも可能だが、基本的には「図表の提示→データの説明→判明事項の指摘」という基本パターンに沿ってレポートを書くこと。

・筆者の評価が入る表現の扱い
Ex.「回答者の30%にすぎない」→「30%しかいない」というような筆者の評価を含んだ表現
→基本的に、実験結果など、客観的なデータを重視する理系ではあまり用いない。
論理展開を重視する文系では用いる(中立的な「である」との違いに注意)。

・以上?以下?未満?~を越えている?
→「以」が入ったら、その数値を含むと覚える(「50%以上」には、50%が含まれる)。

注意

・自分で作った図表には、「~に示す」を使う。
→「~を示している/示したものである」はどちらにも使える。

・「ぐらい」は口語的なので、レポートや論文では使用しないこと。

 

授業メモ

・今回の宿題で、論理的にスムーズな文章を書こうとすると、教科書にあるデータだけでは足りない。
①「構造的には正しいが、このままレポートにするとちょっとおかしい」という直感が働くようにする必要があると感じた。(実際のレポートや論文をたくさん読む、書く、など)
②インターネットで検索しても、信頼性のある情報に辿りつけるので、教科書では情報が足りない場合は、自分で検索したり、本を探したりする癖を身につけて欲しいと感じた。

・教科書を忘れたり、宿題を提出していない学生が毎回いる。特に、この授業は作文なので、アウトプットは非常に重要。宿題を出すことを習慣付けて欲しい。先生が、個人個人に声をかけてさり気なく注意をするのは効果的だと感じた。

 

感想

メンバーも固定され、学生の名前も大体覚えられた。今後は、宿題を忘れがちな学生、大人しい学生、グループ分けの時に積極的に発言する学生など、各々の学生のキャラクターも、少しずつ把握していきたい。

第三回 目的の提示の仕方、第5課

基本情報

参加学生:10名

 

授業内容

1.要約文の作成(15分)

遅刻した学生以外の全ての学生が15分以内に要約文を完成させていた。

2.前回の要約文(『アナと雪の女王』)のフィードバック(15分)

受講生の書いた要約文から例を3つ挙げ、プリントとて配布。

要約のポイント

①第一文目に何を書くか?

ほとんどの学生が「~~の映画『アナと雪の女王』」と書き始めていたが、「~~」の部分には、重要な情報を入れるべき。文法的に正しくても、重要度の低い情報が入った文章を最初に持ってくるのは、新聞記事の要約文としては相応しくない。

②重要な情報を見落とさない

新聞記事では、重要な情報が第一段落目で提示されがちだが、第二段落、それ以降でも、要約文に書くべき重要な情報を見落とさないようにすること(今回の要約文では、日本で公開される外国映画は一般的には字幕版が人気である。→そのために、『アナ雪』が吹き替え版が人気であることがイレギュラーであるという情報)。

③「さらに」「異なる」「従来の」を使ってみよう

「それに、今までと違って」より、「さらに、従来の日本映画と異なり」とした方がレポートには相応しい。

3.作文フィードバック(10分)

今回の作文は、作文の構造よりも、文型の間違いが目立ったので注意。

作文のポイント

①「しかし」を使って重要情報を目立たせよう

「Aの実験では、Bが明らかにされた。しかし、Cは明らかになっていない」
というパターンの文章を用いるとき、「しかし」が抜けても、文章として間違いではないが、自分の主張を目立たせるためには、「しかし」を入れるべき。
(「但し」でも間違いではないが、「但し」は補足的に使われる語であるため、主張が弱くなる)。

 

②引用をする時の表現に注意

a) Aの実験では、Bを観察することである。
b) Aの実験では、Bを観察した。

→ 序文で、先行研究の紹介をするときには、b)を用いる。

c)Aの実験によって、Bが分かった。
d)Aの実験によると、Bが分かった。

→ 序文で、先行研究の紹介をするときは、d)を用いる。(c)のような表現は、Aの実験の内容が詳しく説明された後に用いられることが多いため、序文ではあまり使わない)。

4.グループに分かれ、作文の確認(15分)

2グループに分かれ、お互いの作文を見せ合いながら宿題をチェック。

 

5.第5課の説明(15分)

注意事項

・「AはBである」と「AとはBである」の違い。
 →どちらを用いても間違いではないが、後者の方が、「定義」が明確になる。

・「用いる」を使おう
 →「使う」と意味はほぼ同じだが、「用いる」の方が具体的。

・「行った」「行われた」の違いに注意
 →「(筆者が)実験を行った」「(筆者以外の人・機関によって)実験が行われた」の違いに注意すること。

 

授業メモ

・文法的な間違い<適切な表現

「要約文では一文目に書くのは重要な情報」
「「持つ」よりも「用いる」を使った方がいい」
「「AによってBが分かった」は序文ではあまり使わない」
など、「文法的には間違いではないが、表現としては相応しくない」表現を取り上げ、その理由を説明する場面が多かった。

→ この授業に参加しているのは上級の学生なので、文法的な間違いについては、自分の知識や、他の学生とのディスカッションで補うことができる。そのため、「レポートではこういう表現を使うものだ」という、より、自然な日本語を使うための指導を中心に行っていくことが重要。

 

・宿題提出の徹底

出席学生は毎回10人はいるのに、宿題を提出しているのは出席学生より少ない。
この授業は「宿題の提出→授業でのフィードバック」をセットで行って初めて学習効果があるため、「宿題の提出と毎回の出席」が重要であり、成績にも影響することを、もう一度、周知した方がいいかもしれない。

 

・グループ分けの難しさ

この授業ではグループに分かれて学生同士で話し合いを行っているが、毎回、活発に話し合われているグループと、そうではないグループが生まれてしまっているように感じる。
学生同士で何を話し合ったか、話し合った後に、「この人の作文のここがよかった」など、「こういう表現があって面白かった」、「ここがよく分からなかった」など、グループごとに一言ずつ何かを発表してもらってもいいかもしれない。

 

今後の課題

グループに分かれた後、学生がどのような空気で話し合っているのか、また、どの学生がどんなキャラクターを持っているのかがまだよく掴めていない。
来週、学生の間に入って、作文を見せ合うときに、学生たちが何を話し合っているのか、学生の目線で確かめてみたい。

第三回 課題の提示の仕方、第4課

基本情報

参加学生:10名

 

授業内容

1.要約文の作成(15分)

・受講生が要約文の作成に慣れてきたこともあり、出席者全員が15分で要約文を作成することができた。

 

2.前回の要約文(『さよなら国立競技場』)のフィードバック(20分)

受講生の書いた要約文から例を4つあげ、プリントとして配布した。

要約のポイント

①書くべきポイント

・重要なのは、国立競技場が建て替えられることではなく、「さよなら国立競技場」というイベントが開催され、それを人々が楽しんだということ。

・なぜ、建て替えられるのか、なぜ、イベントが開催されたのか、「WHY」の部分を書くことが大事。

②書かなくてもいいポイントについて
・4段落から構成されているが、最後の段落の内容は一番最初の段落の要約で補うことが可能なので、削っても良い。

取り上げられた例文

例文1:記事の構成を入れ替えず、そのままコンパクトにまとめたもの。

例文2:記事の構成は殆ど変っていないが、第4段落目の内容を最初の段落の部分に挿入しているもの。

例文3:例文1、例文2とは、第一段落のまとめ方が異なっているもの。

例文4:記事の構成が入れ替わっているが、うまく要約文として成立しているもの。

注意事項

・点の打ち方:特に一文が長くなってしまった場合、適切な場所に点を打たないと非常に読みにくくなる。

・イベントはすでに終わっている:記事が「~た」体で書かれていることから、イベントはすでに終わっていると推察することができる。
 →「イベントが行われている」などの書き方は間違い。

 

3.作文(前回の宿題)のフィードバック(10分)

受講生の宿題から例を三つ取り上げ、プリントとして配布。

宿題内容の確認

テキストに提示された構成に従って、レポートの序文を書く。
問題の指摘 → 問題解決の必要条件の提示 → 研究行動の提示

注意事項

・テキストで提示された定型文のうち、「研究行動の提示」を書くのを忘れていた受講生が多かったので注意。

取り上げられた例

例1、例2:指示された構成に従って、シンプルにまとめられたもの。例1と例2では、語の定義を挿入する場所が異なっている。
 →例1:近年、Aが問題になっている。Aとは、~である。
 →例2:近年、~という現象、すなわち、Aが問題になっている。

例3:問題提起が詳しく書かれたもの。自分で考えて、詳しく問題提起をした点が素晴らしい。しかし、研究行動の提示を忘れている。

注意事項

・「そこで」を使おう!
 「そこで、本稿では~」というのがレポートのパターン。「したがって」「そのため」でも間違いではないが、「そこで」を使うのが望ましい。

・「本稿」を使ってみよう!
 小さなレポートの場合、序文では、「本研究」よりは「本稿」や「本レポート」といった表現が使われる。

・自分の分野に合わせた表現を使おう
 事前に実験を行い、その結果を報告する、理系の論文、レポートでは「検討した」が、論文を読みながら理論を組み立てていく文系の論文、レポートでは「検討する」が使われる。
 なお、要旨を書くときには、「検討した」が使われることの方が多い。

・「所謂」よりも「である」を使おう!
 レポートでは、「~という現象、所謂、A」より、「~という現象であるA」という表現を用いること。「所謂」だと、「通称」「一般的には~といわれている」というようなニュアンスが出る。

 

4.グループに分かれ、作文の確認(15分)

3グループに分かれ、お互いの作文を見せ合いながら宿題をチェック。

 

5.第4課の説明(15分)

注意事項

・第3課の「課題の提示」とは異なる構造をとっていることに注目。

・「によって」と「によれば/によると」の違いに注意。
 「~によって、~がわかった」
 「~によれば/によると、~だ」(によれば/によると→情報源の提示の機能を持つ)

・「解明」と「究明」の違いに注意。
 中国語の「究明」と日本語の「究明」では意味合いが異なるため、「解明」の言い換えとして「究明」を用いるのは好ましくない。

 

授業メモ

 

全体的な感想

第一回、第二回は受講生に授業に慣れてもらうための、イントロダクションとしての側面があったため、第三回目の授業でようやく、通常通りの授業が始まったという感があった。
第一回、第二回では授業の運営面にばかり目が行っていたが、今後は、授業の内容も注視しながら、実習生として授業に参加して行きたい。

フィードバック用のプリントの作り方

この授業は、予習型の授業であるため、教科書を読むことよりも、作文のフィードバックを主体に授業が進んで行く。今回の授業は「通常の」授業としては最初の授業だったが、今回の授業を見学して、どの作文を例として取り上げるか、取り上げた作文を通して何をポイントとして受講生に伝えるかがとても重要であると実感した。
この授業では、目に見えるフィードバックとして、フィードバック用のプリントを配布している。これは、受講生の書いた要約文、作文から、よく書けているものをピックアップし、プリントしたものである。しかし、「よくできている作文」にも、指示通り、シンプルにまとめた作文もあれば、学生なりの工夫が凝らされたものもあり、ランダムに並べるだけでは意味がない。今回の配布されたプリントを見て、取り上げる作文の選び方、並べ方に、下記のような基準が設けられているように感じた。

①教科書や授業中に指示されたことを、そのままシンプルにまとめているもの。
 → 例として最初に取り上げることで、学生に、模範的な作文のモデルを提示する。

①' ①とは異なる方法で、シンプルにまとめられているもの。
 → ①と同じように、指示通りにシンプルにまとめられているが、①とは文章の順番や構造が異なっているものを、「こういう書き方でもよい」と、①とは異なる模範モデルとして学生に提示する。この時、①とはどこが異なっているのか、説明する。

②教科書の内容を応用して書いているもの。
 → 指示されたことをそのまま作文したのではなく、自分で調べたり、自分で工夫したりして、文章を詳しく、読みやすくしたものを①の次に置く。大学では、自分で考えたり、調べたりすることが重要なので、①がシンプルなモデルであるのに対して、こうした作文は、「理想的な回答」であるといえる。こうした回答を取り上げることは、「より良い作文を書こう」と、学生が一歩踏み込んで学習するためのモチベーションを引き出すと考えられる。

③教科書の指示とは異なっているが、成功しているもの。

 → 教科書や授業の指示には反した構造や文体を用いているが、レポートの文章として十分に通用するような文章を②の次に取り上げる。このような例は、「教科書にはこう書いてあるが、こういう場合はOK」という例外を提示するのに役に立つ。但し、このような例を取り上げる場合は、どのような条件であれば大丈夫なのか、その理由と条件をはっきりと提示する必要がある。

 

今後の課題

まだ、授業の運営の仕方や、授業内容にばかり目が行って、学生の様子にまでは注意が向いていないので、少しずつ、学生の様子や反応も確認するようにして行きたい。

 

第二回 要約文の作り方、第3課

基本情報

参加学生:12名(初参加者1名)

授業内容

1.イントロダクション(10分)

・出席
名前の読み方などを確認する

・プリント配布+宿題の返却
宿題返却の際に、名前を明記すること、Wordを使用すること、など、個別に注意。

※機材トラブルのため、授業開始が5分遅れた。

2.要約文の作り方(20分)

・配布したプリントに沿って、要約文の作り方を説明
 ◇構造を変えずに、記事をそのまま縮めることが重要!
 ◇新聞記事の特殊性に注意!(構造、文体など)

3.学生同士で要約文の見せ合い(10分)

・宿題未提出の学生は、配布されたプリントの確認

4.要約文の作成(20分)

・15分で書き終わった学生が少なかったため、3分延長した。

5.第3課の説明(10分)

 

授業メモ

全体的な感想

前回よりも出席者が減り、今回の授業に出席した学生を中心にメンバーが固定されていくものと思われる。第一回目の授業は授業の紹介やイントロダクションに終始してしまうため、ある意味では、メンバーが固定され、授業の内容に入って行く、第二回目の授業こそが、本当の初回授業であると言えるだろう。
前回は、初回授業という観点からメモをまとめたが、今回は二回目の授業という観点からメモをまとめて行きたい。

学生の名前と顔を覚える

今回の授業では、出席確認を兼ねて、各学生の名前の読み方や呼び方の確認がなされた。この授業には、①予習型であるため、学生がきちんと宿題をこなすことと、それに対する教員からのフィードバックが重要である。②また、学生同士の課題の見せ合いがある。という二つの特徴があり、教員と学生、学生同士の関係性があまりに希薄だと、授業がうまく行かない可能性がある。そのため、学生の名前を覚えるのは、当たり前のことかもしれないが、特にこの授業では重要であると感じた。

  • メモ:留学生の名前は読みにくいものも多いため、授業を円滑に進めるためにも、授業に出席することを決めた学生の名前の読み方や呼び方を、教員の側から確認して行く必要がある。

授業の流れと方向付けを決める

第二回目の授業は、メンバーが固定され始める授業である。そのため、第二回目の授業とは、「これからどのような流れで授業をしていくのか」を学生に提示する授業として位置付けることができると感じた。この授業では、毎回、教員から学生に今日の授業の流れについて説明がなされるのだが、特に、学期の前半の授業では、最初に授業の流れを説明しておくことは、学生が授業に馴染むために有効な手段だと思った。
一方で、授業の流れをある程度決めていても、学生の様子や授業の残り時間に応じて、柔軟に授業の内容を変更して行かなければならない。今回の授業では、要約の説明と要約作成に時間がかかったため、当初の予定であった、第1課、第2課の授業の説明を飛ばして、次回の宿題のために必要な第3課の内容の説明をすることになった。
このように、二回目の授業は、学生に授業の流れを覚えてもらうと同時に、学生の様子を見て授業の流れを決めて行く、今後の授業の方向付けを考えるために重要な意味を持つと感じた。

  • メモ:二回目の授業では、学生の様子を見ながら授業の流れを決め、学生にこの授業はどのように進んでいくのか掴んでもらう必要がある。

 

感想

まだ学生も授業の雰囲気を掴めておらず、先生もどんな学生が来ているのかまだ把握できていない段階にあるので、第二回目の授業は、授業の流れを柔軟に決めて行かねばならない。今回の授業のように、ベテランの先生が教鞭をとっている授業ならその場その場でうまく対応ができるが、まだ授業をやりなれていない場合、そこまでうまく対応できないと予想されるので、特に、学期の前半は、いろんな事態に対応できるよう、入念な準備が必要だと感じた。

第一回 オリエンテーション、レベルチェック作文

第一回(10月3日)の授業記録です。

基本情報

参加学生 19名
・先学期は女性の比率が高かったが、今学期は男女比5:5程度。
・留学生センターの授業を受けるのが初めてという学生とJ700から来た学生の比率も、5:5程度。

授業内容

1.イントロダクション (5分)

・この授業について
どのような学生がこの授業の対象となるのか。特に、J700クラスとJ850クラスの違いについて説明がなされた。

・教員と実習生の自己紹介

2.シラバススケジュール (30分)

・基本的事項
シラバスのスケジュールを確認する前に、どのような学生が来ているのか、先生からの確認(参加学生参照)や欠席時に求められる対応などが説明された。

シラバス
シラバスに沿って、授業の目標、授業計画、履修要件、教科書、評価、授業外学習、その他について説明がなされた。

3.受講者カード記入 (10分)

・課題について
カードの記入と同時に、授業の残り時間を加味して来週の課題が設定され、提出方法などについて説明がされた。

4.レベルチェック作文 (20分)
5.作文の回収 (5分)

・作文の作成について
20分で作成するようにという指示があったが、殆どの学生が制限時間を最大限に使って作文を作成していた。早く書き終わった学生で、作文の作成時間は15分程度、時間のかかった学生で25分程度だった。

授業メモ

初回の授業であったため、初回の授業ならではの授業のポイント工夫、注意点などが観察できたため、今回は「初回の授業」という観点からメモをまとめる。

①学生の把握と学生への配慮

初回の授業であるため、先生によるどのような学生が来ているのか確認や、まだ学生生活に慣れていない学生に対する配慮が見られた。
たとえば、授業の前半で、留学生センターの授業を受けたことがあるか否か日本語能力検定試験1級を持っているか否かを質問する場面が見られた。
特に最初の質問では、はじめて留学生センターの授業を受ける学生が多くいることが分かった。つまり、授業の取り方や大学のスケジュールに慣れていない学生が多いということである。それを受けて、先生は授業期間、振替授業日などについて詳細に説明していた。

  • メモ:初回の授業なので、まだ授業そのもののシステムがよくわかっていない、慣れていない学生が多くいる可能性があり、そうした学生に配慮することが必要。特に、インターネット上のシステムを使用する場合、ログインできない学生がいる場合を想定することが必要である。

 

②授業を受ける上での留意点の説明

シラバススケジュールの説明では、この授業はどのような学生を対象にしているか(していないか)、この授業ではどのように評価が決まるか、どのような課題が出るか、など、あらかじめ、学生が知っておくべき情報が提示された。初回の授業として当然のことかもしれないが、学生にとっては、この授業を受けるか、受けないかを決める、重要なポイントとなるので、最初の授業でしっかり説明しておく必要がある。
また、宿題がほかの学生の目に触れる可能性や、ポートフォリオの作成についてなど、あらかじめ学生の同意を得ておく必要がある事項についても説明がなされた。これも、最初の授業で学生に確認しておかなければ、ほかの学生に作文を見せたくない学生の作文を配布してしまったり、宿題を捨てる学生が出てきてしまったりと、問題が発生する可能性がある事項である。

  • メモ:学生が何を知りたいか、何を知らせておくべきか(知らせておかないとどのようなことが起きるか)をあらかじめ予想し、ポイントをまとめておくことが必要。

③授業を受けるメリットの説明

初回の授業では、この授業を受ける上での注意点はもちろん、この授業で何を得られるのか、授業の魅力やメリットを伝えることも重要である。
例えば、今回の授業では、課題の説明をする際に、この課題をこなせば、語彙が広がる、文法の練習にもなる、日本語を処理するスピードが上がる、など、課題をこなすことによって得られる能力について明確に説明されていたため、ただ課題が多くてしんどいだけではないという説得力があった。

  • メモ:課題や授業内容について説明する際には、その課題をする必要性とメリットについて、明確に説明すること。

感想

初回の授業ではトラブルが起きやすいので、十分な準備と臨機応変な対応が重要だと感じた。
まだ学生も緊張しているようなので、授業の回数を進める中で、良い雰囲気を作れるように貢献できればと思う。